あの頃の嘉人

過去インタビューを振り返りながら、プロサッカー選手「大久保嘉人」の軌跡をたどる。(協力:週刊サッカーダイジェスト)

週刊サッカーダイジェスト(2004年9月14日号)

まさかの早期敗退に終わったアテネオリンピック。
世界を感じたストライカーは、いま何を思うのか?アテネのこと、A代表、そして海外への想い…(前編)

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大久保嘉人の夏は、あまりにも早く終焉を迎えた。しかし、グループリーグ敗退という結果とは反して自身は世界の大舞台で、強烈な輝きを放っていた。果たしてオリンピックの経験は何をもたらしたのか。帰国直後の大久保に、いまの心境を訊いた。

後編

「高いレベルでやらないとこれ以上伸びない気がする」

—すでに敗退が決まったなかでのガーナ戦は気持ち的に難しかった?

「そうですね。でもオレは気持ちを切り替えて、アピールしようとしか思ってなかった。ガーナはイタリアにも引き分けたし、パラグアイにも勝ってきてたんで、ホントに強いチームだったし、オレらに引き分ければ決勝トーナメントに行けるわけで、すごい思いっきり来るんだなって思ってたから。こっちは上には行けないわけだけど、そんななかでもしっかりアピールしようと思ってました。最後の試合だし、楽しんでやろうと」

—余裕を持ってやれたことが、ゴール、勝利につながったのでしょうか。

「あのゴールは、ボールが来た瞬間に1回キーパーを見て前に出てるのを確認して、でも意外とボールが速かったから、コントロールするのが難しそうだったんで、そのまま頭で合わせました。でも点を取ってもあんまり嬉しくなかった。勝ったこともね」

—結局グループリーグ敗退に終わりましたが、3試合を通して、大久保選手は絶好調でした。御自身の評価は?

「思ってたよりできたと思います。大会前はどれくらいできるのかな、もしかしたらできないかもしれないっていう気持ちも正直ありましたね。でも、普通に自分のプレーを出せたんで良かったです。やっぱり気持ちの面は大きかったですね。気持ちが乗ってたし、オリンピックで活躍したい気持ちが強かったですから」

—目標を達成できなかったことに対しては、そう感じていますか?

「悔しいですね。それしかないです。けっこう良いチームだったと思うんですけど、やっぱり一人ひとりの力が足りなかったんでしょうね。持ってる力を出せずに、悔いが残ってる選手もいっぱいいると思いますよ」

—ところで大会中は、どのように過ごしていたのですか。

「ずっとホテルですよ。ギリシャは、街がまだ工事中だったりしてあまり綺麗な印象はなかったですけど、行ったなかではボロスが一番良かったですね。港町だったんですけど、何度かお茶に行きました。まあ、散歩したり、お茶したりするくらいしか、息抜きはなかったんですけど」

—今大会の大久保選手でもっとも印象的だったのは、キレずにプレーしていたこと。いつもなら文句を言いそうな場面でも、キレなかった(笑)。

「レフェリーがおかしいのばっかりだったから(笑)。とくにイタリア戦のレフェリーが一番酷かった。だからなんか言ったらイエロー出るなって思ってたから、我慢しました。ホントは腹立ってましたけどね」

—冷静にプレーしようとしているのが伝わってきましたが。

「それよりも勝ちたい、点取りたいっていう気持ちがあったから。文句言ってもしょうがないし。とにかく前に行くぞ、っていう気持ちだけだった」

—チームとしても、大久保選手につなごうという感じになっていました。

「ボールをドンドン集めてくれって試合中も言ってたし、おかげで自由にできてたところはありますね」

—これでオリンピック代表チームは解散になったわけですが。もう、次のステップを見据えているのですか。

「そうですね。終わったことを引きずっててもしょうがないんで、次を見ていくしかないですよね」

—次の目標は、やはりA代表になるのでしょうか。

「A代表にも選ばれたいですけど、まずは海外に行きたいですね。もちろん代表入りもしたいですけど、いまはそういった気持ちの方が強い。昔からの夢ですから。オリンピックもそうだったけど、自分の夢を叶えたいですね」

—今回海外の選手と試合して、自信を深めたことで、海外への気持ちがより強まった?

「そうですね。やっぱ、そういうところに行かないと、これ以上伸びないと思うんですよね。せっかくオリンピックで自信を付けたんだから、レベルの高いところに行ってやらないと。このまま日本にいたら、落ちていく気がする。やっぱりうまい選手とやらなきゃダメなのかなって、今回のオリンピックで気がつきましたね」

—小野選手からアドバイスを受けたようですが、大久保選手も小野選手とそういった話しましたか。

「日本に帰ってきてからも電話で話したりしましたよ。まあ、そんな大したこと話してないですけど。今度遊び行くわ、みたいな。まあ海外はできるだけ早く行けたらいいと思います」

—海外もそうですが、A代表入りの期待もあります。代表を離れて約半年が経ちましたが、その間、メンバーも変わり、アジアカップでは優勝。だいぶ様変わりしたように思いますが。

「代表の試合はずっと見てましたけど、どうなんですかね。どこが変わってきたとか、外から見ていてもわかんないっすよ。」

—そこに自分が入ってプレーするっていうイメージはある?

「いまは全然考えてないっす。選ばれるのかな?」

—では、最後に聞かせてください。アテネオリンピックとは自分にとってどういう大会だったのでしょうか。

「とにかく自信がついたんで、いい大会になったと思います。できれば、もっとやりたかったですね。負けたっていう悔しさよりも、やれたっていう満足感のほうが大きい。だから、いまからだなという気持ちですよ」


後編

取材・文:原山裕平(本誌編集部)

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