あの頃の嘉人

過去インタビューを振り返りながら、プロサッカー選手「大久保嘉人」の軌跡をたどる。(協力:週刊サッカーダイジェスト)

週刊サッカーダイジェスト(2003年8月26日号)後編

いま、あえて
「大久保嘉人」を知る(後編)

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今年5月に代表に初招集されて以来、大久保嘉人は日本でもっとも注目を集めるプレーヤーとなった。しかし言葉数が少ないだけに、いったいどのような男であるのかそれほど明らかにはされていない。だからこそ、いまあえて、大久保嘉人を知る必要がある。

後編

J2で鍛えられたことが良い経験になった

国見を卒業して、セレッソに入りました。オファーはいっぱい来てたんですが、そのなかからセレッソを選んだのは、オレがちょうど入る年に優勝争いをしてたっていうのもあるし、攻撃的なサッカーをしてたのが大きい。オレもディフェンスがあんまりできないタイプなんで、このチームが一番合うかなって思ったからです。

森島さんがいたっていうのも、ありましたね。タイプも似てるし、背もちっちゃいし。まあ、森島さんの方がちっちゃいけど(笑)。これ、大きく書いといてください。あっちの方がだいぶちっちゃいです(笑)。

それはさておき、やっぱり森島さんはボールがないときの動きがすごい速いし、見習わなければいけない点が多い。そういうのを見て盗めればなとは思ってました。いや、いまでもちゃんと思ってますよ(笑)。

プロと高校で一番違うなって感じたのは、やっぱりスピードですね。ボール取られたら、もう一瞬でいかれちゃう。とにかく攻守の切り替えが速い。それに最初はついていけなかったっす。

でも比較的早くデビューできたんで良かったです。デビュー戦の相手はレッズ。しかも駒場。やっぱり雰囲気がすごくて、オレは途中で変わって入ったんですけど、そのときはさすがに緊張しましたし、大丈夫かなって思いながらプレーしてましたね。ホント、ビビってたんで、積極的にいけなかったし、ボール取られたら怒られるかもって消極的に考えてしまって、ボールを受けられるところでも、受けにいかなかったり。自分としては最悪のデビュー戦でしたね。

初ゴールは、次のジュビロ戦です。やっぱジュビロっていったら、すごいと思ってたし、すごいひとたちと一緒にやれるってことでうれしかった。とにかく思いっきりやろうと思ってたんで、それが結果に表れて良かったですね。ただその試合で退場もしちゃいました。ちょっと思いきりやりすぎたって感じですかね(笑)。

でも、とにかく1年目はつらいシーズンでした。ケガはするし、J2にも落ちるし。散々でしたよ。J2に落ちたときには移籍も考えましたね。いろんなひとに相談しまくりました。出たほうがいいよって言うひともいたし、残ったほうがいいって言うひともいた。だけど、早いうちにJ2という厳しいリーグを経験しておくのも悪いことじゃないと思ったんで、セレッソに残ることに決めました。

J2はレベルが低いから、実力が落ちるんじゃないかっていうことも言われましたけど、そういう心配よりも、そのなかでも試合に出れなかったら、どうしようっていう心配のほうが大きかったですね。でもJ2では、点をいっぱい取ることができたんで、自信がつきました。あれだけ点を取れたんなら、このままいけばJ1でも通用するんじゃないかっていう。実際にJ1でも勢いでよくいけたし、そのまま代表までいくことができた。もし、あのとき違うチームに移籍してたら、いまごろ試合に出れてなかったかもしれない。そういったことを考えると、去年、J2の厳しい環境で鍛えられたことは本当に良い経験になりましたね。

今年からJ1に復帰しましたが、第1ステージの5位という成績は、予想以上に良くやれてたと思います。開幕前は正直、無理だろうなと思ってましたから(笑)。でも、振り返ってみるともっと上にいけたと思う。勝てる試合を落としたこともあったので、それは本当にもったいなかった。だから、第2ステージは優勝できるチャンスもあると思うんで、一試合一試合を大事に戦っていきたいですね。

個人的には8ゴール決めましたが、もっと取れたと思います。チャンスを外してしまったことも多かったんで。そのあたりを確実に決められるようになれば、もっと上にいけると思います。

今年は代表にも選ばれましたけど、選ばれたときは、単純に嬉しかったですね。初めて代表のピッチに立ったときは、韓国戦だったんで、観客もすごかったし、テレビで全国のファンが見てるわけだし、やっぱり緊張はしました。でもいつもどおりやってやろうと思いながらピッチに入りましたね。出来としてはまあまあ良かったと思います。普段だったら遠慮しちゃったと思うんですけど、あのときは周りが気を使ってくれましたから。結果は負けちゃいましたけど、個人的には納得のいく試合だったと思います。

そのあとにコンフェデに行ったんですけど、やっぱり世界と戦ってみてまだまだ足りない部分はあったと思う。だけどフランスとかコロンビアとか、うまいチームとやれたってことは、ホントに良かったと思いますね。一番の課題は、やっぱり判断。判断がちょっとでも遅れたらやられちゃうんで、ワンタッチでボールをつないでいくことが大事だと思いましたね。でも、外国人は身体がデカイから遅いし、裏を突くのはそう難しくない。切り返せばついてこれないし。だからスピードやドリブルに関しては、ある程度通用したかなと。まあ、とにかく充実した1か月でしたね。

注目を集めるようになったことは、やっぱりうれしいですよ。注目されてるんで、いままで以上のプレーをしなくちゃいけないという気持ちも出てきた。これから本当にがんばらなくちゃいけないなと思ってます。


後編

取材・文:原山裕平(本誌編集部)

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